インドの教育事情

インド人は頭が良く、世界のIT業界を席巻しているというイメージがある。理由のひとつは教育の充実があると思っている人がいるかもしれないが、国の全体を見れば決してそうではない。確かに一握りのエリートは高い教育を受けて有名企業に就職して、そこで厳しい競争を勝ち抜いて成功を収めているが、多くの人々は質の低い学校へ通い、非正規雇用や単純労働といった職に就いている。

国を挙げた政策で小学校や中学校の学校数を増やしてきたし、小中学校は義務教育であり無償で受けられるが、学校の質が低いのが現状である。先生の数が不足しているし、質も高いとは言えない。教員のなかには授業をせずに出席だけとって帰宅させるという者もいるという。ある調査結果では10才の子供で簡単な文章を読んで理解できる者は全体の55%だという。新型コロナ感染症の蔓延で状況はさらに悪化している。

田舎から都会で出てきて働く労働者のなかにはコロナ禍で失業して田舎に子供とともに帰る者も増えている。親の教育に対する関心は低く、田舎に帰っても就学させないケースが多く、特に女子児童で顕著だ。

都会に残る子供たちにとっても困難はつきまとう。コロナの感染拡大対策のための学校閉鎖は昨年10月に終わったが、まだ開いてないところも多く、オンライン授業を行っている。しかし、スマホやパソコンがなく授業が受けられない子供たちも多い。学校が開いていても、親がコロナを恐れて登校させないケースもある。

子供は比較的、コロナに罹りにくいことから、マスクの着用、三密の回避、消毒などを徹底させて学校を再開すべきである。6ヶ月間、学校にいかないとその子の生涯賃金が5%減るという調査結果もある。単に個人の損失だけでなく、国の将来の発展のためには全体の教育水準の底上げが必須である。政府の教育支援が待たれる。

児玉 博嗣

インドをはじめ、世界各地の火力発電所の発電設備の保守管理を技術面から サポートする仕事を30年以上、発電所の人たちと一緒に手がけてきた。 趣味は歴史書の読書、エッセイーや掌編小説の執筆、町の散策と多岐にわたる。 幅広い国際経験を生かし、インド・日本の双方のウィン・ウィンの関係の構築 に貢献したい。

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