先日、イギリスでCOP26が開催され球温暖化対策が話し合われた。モディ首相は「インドの温暖化に対する責任は先進国に比べて軽い。先進国はもっと努力すべきだ」と発言した。これは確かにある一面、正しい。インドの人口は世界全体の18%を占めるが、今までのCO2累積の排出量は世界全体の3%に過ぎない。
しかし、インドには別の大きな問題がある。それは大気汚染による健康被害だ。デーリーの呼吸器系のある医者の話によると、30年前は肺がん患者の9割は50代以上の男性の喫煙者だったが、最近ではその半数は非喫煙者で女性も40%を占めているとのことだ。子供の診察でも肺が黒くなっているケースをよく見掛けるとのことだ。
都会だけでない。ヒマラヤから南に広がる大平原、約6億人が住んでいるがここでも大気汚染は起っている。灌漑用のポンプを動かすジーゼルエンジンの排気ガス、石炭火力発電所の排煙などが原因だ。大気汚染によって平均寿命が9年縮まるという調査結果もある。2019年だけでも167万人が大気汚染が原因で亡くなっている。(インド全死亡者の1/6)デーリーの子供たちの30%にはなんらかの喘息の病状がある。
政府も手をこまねいて見ているわけでない。モディ首相の主導で家庭での調理の燃料に石炭に代わってガスを使うように奨励しており、太陽光発電や風力発電の普及にも力を入れている。2019年には車の排ガス規制を行って都市の大気汚染度を5年間で30%低減することを法令化している。市民グループもヒンズー教の祭り、ディワリでの爆竹使用禁止を呼びかけたりしている。炭坑や石炭火力発電で財を成した大富豪たちも再生可能エネルギーへの投資に大きく舵を切っている。大気汚染というインドの抱える問題も先の見通しには明るさが見えるようだ。