ロシアのウクライナ侵攻を世界中の民主主義国家は厳しく非難している。しかし、民主主義国家のなかでも世界一人口の多いインドではロシア非難はトーンダウンしている。侵攻が開始されて1週間ほどしてから、国連総会で行われたロシアのウクライナ侵攻に対する非難決議では、193カ国中、アメリカや日本など141カ国が賛成に回った。一方、インドは独裁国家である中国などと同じように棄権した。インドはインド太平洋地域での中国の軍事的・経済的な影響力の拡大に対抗するための安全保障や経済を協議する枠組みであるクアッドに、日本、米国、オーストラリアととも入っている。3つの国と同調して、非難決議に賛成するものと思われていた。でも、インドにはロシアを公然と非難できないお国の事情があった。
インドは冷戦時代に当時のソ連から軍備品を輸入していた。それは今でも続き、潜水艦、戦車、戦闘機や地対空ミサイルなど、主要な軍備はロシア製だ。そのメンテナンスやスペアパーツの供給にはロシアの協力が欠かせない。一方、アメリカや日本などの西側諸国との関係がよくなるなかで、ロシアへの依存を改めようとの動きが過去にあった。アメリカから軍備を輸入しようとしたが、ロシア製に比べて価格がずっと高いこと、最新鋭のものを売ってもらえないこともあって断念したようだ。国際社会で「蛮行を続けるロシアに近い」と見られることはマイナスであり、今後、軍備の調達先を見直す可能性も十分あるかもしれない。しかし、当分はどっちつかずの態度をとるのではないか。