カースト制度

Caste systemカーストの最下位(Dalits)の出身者の間でも格差はある。優秀な成績で大学に進学出 来た人もいる一方、何世代にも亘って行ってきた生まれた土地で牛の世話をする仕事をし ていたDalitsに属する青年がそれを断ったため、村を追い出され、都市で出て行き工場で 単純労働をやって細々と暮らしているような人もいる。

カースト制度は、インダス文明が滅んだ後に、インドに進出してきたアーリア人が始め たもので、後世に誕生したヒンズー教のなかでも引き継がれ連綿と続いてきた。しかし 、70年前に出来た憲法では市民は平等であることになっており制度上はないことになって いる。

それ以降、Dalitsの身分は向上し、彼らを避ける風習も失せてきた。Dalitsに与えられた 決まった仕事(稲刈り、ゴミの回収、皮のなめしなど)をしなくてもよくなった。だが、カーストの高い階層の人たちが彼らを虐待したり強姦したりするようなこともなくなって はいない。差別はヒンズー教徒に限らない。2000万人いるとされるカソリック教徒の65% はDalitsの出身だ。カースト制度が嫌で改宗したものの依然として差別がある。キリスト教 に改宗した者でも牧師になれたものはほとんどいない。先祖がイスラム教に改宗した家系 でも差別は続いており、宗派に関わらず下位のカーストの者の出世は限られている。1990 年から2000年にかけての経済成長でDalitsの貧困層も減ってきたが、エリート層は上位の カースト出身者で占められている。村から都市への人の移住でカースト制度も揺らぎつつ あるがそれでも根強くその影響が残っている。例えば、異なるカースト間の結婚も全体の 6%と限られている。農村では姓でその人の出身カースト、職業がわかる。それも都会では だんだんと薄れつつあるようだ。

児玉 博嗣

インドをはじめ、世界各地の火力発電所の発電設備の保守管理を技術面から サポートする仕事を30年以上、発電所の人たちと一緒に手がけてきた。 趣味は歴史書の読書、エッセイーや掌編小説の執筆、町の散策と多岐にわたる。 幅広い国際経験を生かし、インド・日本の双方のウィン・ウィンの関係の構築 に貢献したい。