インドの酒

モアはアカマツ科に属す常緑樹でインドに広く分布する樹木である。3月頃に実が熟す前にクリーム色の花びらが地上に舞う。実は多くの油分を含み食用油にも薬にもなる。さらに花を使って酒を造ることが出来る。奥地に住む民族のなかには花びらを拾い集めて生計を立てている人もいる。1Kg、40ルピーで売れるので現金収入の少ない田舎では貴重なものである。花びらを乾燥させて発酵させれば酒が出来る。ヒンズー教では昔はこの酒は神聖なものとされていた時期もあったようだが、現在は一般にそのような考えはない。むしろ、ヒンズー教では、酒を飲むことはよくないことだとされており、政府の酒にたいする規則は厳しく、禁酒を定めている州もある。

これに反して今でもジャールカンド州とチャーティースガル州のある部族はモアから作った酒は神聖なものだとの考えである。作れば密造になるが、高く売れる。しかし、この酒が見直されることになるようで、インドの特産でもあるモアを使った酒造りを合法化し大々的に生産しようとする動きがある、その検討機関を立ち上げるための会議が今年の1月、ジャールカンド州主催で行われた。最近、インドでも富裕層や若者を中心に飲酒の習慣が広まりつつあるとの事なので、その傾向に呼応した動きかもしれない。インドの特産品となるやもしれない。もし、市販されるようになれば取り寄せて飲んでみたいものだ。

児玉 博嗣

インドをはじめ、世界各地の火力発電所の発電設備の保守管理を技術面から サポートする仕事を30年以上、発電所の人たちと一緒に手がけてきた。 趣味は歴史書の読書、エッセイーや掌編小説の執筆、町の散策と多岐にわたる。 幅広い国際経験を生かし、インド・日本の双方のウィン・ウィンの関係の構築 に貢献したい。

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